遠山郷紀行 Ⅱ  小嵐神社


親子の珍道中・遠山紀行は、上村の伝承館から下栗、そして遠山川をチョコッと見た前回に引き続き、和田の町へ。

蕎麦好きな父のため、昼食は丸西屋さんへGO。…あれっ、こんなところにも私が作ったポスターが!w この席になったのは偶然です。

蕎麦好きの父は美味しい蕎麦にご機嫌である。

しっかり食休みもして、お会計のときにおかみさんに
「あの~小嵐神社ってここからどう行くのでしょうか」と道を尋ねる。前回の来遠時に出会った木沢の皆さんから「商売の神様だから、是非行け」と言われていたのだ。
解りやすそうな目印を教えていただき、元々記憶力が長持ちしない私と、記憶力が衰えている爺は一安心。
「道は林道ですか?けっこうハードなんでしょうか」と更に訪ねるとおかみさんが
「道はそんなでもないけどねぇ、落石がけっこうあるんねぇ」
とにこやかに、かつさらりとおっしゃるので、また内心冷や汗をダラダラとかく私。
落石…釣り人たちから聞いた遠山郷の「パンクの洗礼」あれもこれもと思い出す。い、嫌だ。
でも何処を走っても集落が途絶えたらまさに山、というここ遠山、もう行くしかない。…怖くなったら、すぐに戻ろう…。

学校の横を入り、上り坂を行くとすぐに民家は途絶え、道は急な登りへ。
「あれ?道、こっちかな??」どっちへ入って行っても山、という分岐にやや迷いながらも上へと進む。
そして少し不安になった私、前からステッキを突いて歩いてきた老夫婦を見つけるやいなや車を止め「あのうすみません、ちょっと教えていただけますか、小嵐神社は…」と道を尋ねる。
「ああ、そうな、ここから20分くらいかな。」こっちで良かったんだとホッとする。
お2人に礼を言ってまた車を走らせながら、父に
「…ねえねえ、この先になんにもなさそうなんだけど、どこから下ってきたんだろうねぇ、あのお2人」と聞いてみるが「わからん。」とアッサリした返答。
きっとお散歩だよね。でもハードな散歩だなあ…私ならザックを担いで山歩きの装備かな…そして手にはステッキだけだったな…。

乾いた山の斜面の間の道を車は登り続ける。
…うん?なんだか道がほこりっぽくなってきたぞ。
あ。やっぱり

ここ、こわい。落石だ(細かいけど)。
しかも、手で退かすにしてはパラパラすぎる鋭利な石…、竹箒が欲しいぞ。大胆に踏んで行く車が殆どなんだろうけれど、私のン年越しのスタッドレスではいつシュ~、となるかわからない。
上手なのか下手なのか自己判断できかねる避け方で、車を走らせる。
途中どうしようもない落石をどけながら……いいよ爺は車から降りなくて!
だからいいってば私がどけるってば!石が落ちてるって事はまた落ちてくるってことでしょ!!そんなにのんびりどけてたら危ないって!!チョッと爺さん!!!
良かれと思ってしていることで親子喧嘩もみっともないので、腹の中でそう叫びながらとりあえず一度目はお礼のみ言う。次は短気でせっかちな父よりも先に、私がドアを開けよう(笑)。

落石をどけながら、それでも車は更に山道を登り、…ねえ…本当に神社、あるの??まさか通り過ぎたとか…

と心元なくなってきたとき、視界が開けた。

小嵐神社だ。すっかり心細くなっていた私、ホッと安堵して車から降りて体を伸ばす。
あ~~ヤレヤレ、やっと着いた。さあ行こうか…あれ、行かないの?昼寝して待ってるって?朝早かったしね、じゃ、ちょっと行ってくるね。
あたりはしんとして、鳥のさえずりが聞こえるだけ。
山の斜面に目をやると、重なった赤い鳥居が見える。

車一台通らず、私たちのほかは人っ子一人いない山の上。
趣があるのを通り越して、神様がじっとこちらを見ているような畏怖を感じる。

社の立つ斜面には無数の鳥居が奉納されている。
商売の神様と言われるこのご神体に対する人々の信仰心の深さに、言葉を失う。
うす暗い杉林の中の、小高い丘の上に建つ社。奉納された無数のお稲荷様のひとつひとつが、人びとのそんな切実な思いを語りかけてくるようだ。
社とお稲荷さんたちにカメラを向けるのは憚られ、私はそっと、そして足早に社を後にした。

累々と重なる赤い鳥居を眺めながら、父の待つ車へと急ぐ。
足早に歩く私は、人間の日々の生活への期待と不安、そして富に対する憧れと執着を受け止める神様の迫力に圧倒され、手を合わせただけで何も願わなかったことを思い出す。

帰り道は来た道を戻らずに木沢へ抜けてみようかと思っていたが、しんとした小嵐神社の雰囲気とこの先の落石に不安を覚えて、やはり来た道を引き返すことにする。

道中何事もありませんようにと念じながらハンドルを握り、無事に山を下り人家が見えたときは心から安堵した。
里に帰してくれてありがとうございます。本気でそう思った。

今も木沢集落の人々によって大切に守られ、真新しい鳥居が増え続ける小嵐神社。
ここ遠山には、今も無数の神々が住んでいる。
・・・そのⅢへ続く


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